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終わらない夢の中で・15


 ――四度目の桜が咲いた。
 有沢の手の中には、少し色あせた一枚の写真。そこには気持ち良さそうに眠る恋人の姿が切り取られている。
 仕事で疲れた時、家に帰るとこうして写真を取り出して、慈しむように彼に触れる。優しい日々を思い返すと、疲れた身体に幸福感が訪れる。
「あれから、もう三年か……」
 ソファーにゆったりと身を沈め、独り言を呟いた。
「何を見てるんだ?」
 猫のように足音もなく背後から忍び寄られて、飛び上がるほど驚いた。
「ん? 写真?」
「あっ」
 隠す間もなく、素早い動きで大切な宝物を奪われる。
「この写真……」
 誰を撮ったものかわかった瞬間、彼の顔色がサッと変わった。形の良い眉が徐々に中央に寄っていくのを目にし、有沢は慌てて言い訳を探す。
「これは、その……」
「こんなの、いつ撮ったんだ!」
「ご、ごめんっ」
 写真の中よりも三年分、歳を重ねた向井が目を吊り上げて怒鳴る。有沢は反射的に謝っていた。
「なんで本人の了承を得ずに撮ったんだ」
「健吾さんが、写真嫌がってたから……」
「だからって寝てるところを勝手に撮っていいっていうのか?」
「だって、可愛かったから、つい……」
 出来心で、としどろもどろに続けると、向井は怒りを通り越して呆れた顔をする。
「正人がこんなに写真が好きだとは知らなかったよ」
 チラリと視線を送った先にあるのは、デジタルフォトフレーム。もちろんそこには向井が写っている。
 これだけでなく、この有沢のマンションのいたるところに向井を被写体とした写真が飾られていた。
「いったい何枚、僕の写真を撮れば気がすむんだ」
「何枚でも!」
 写真は何枚あっても足りない。向井は毎日違う顔をするのだ。
 三年前、向井はいつも笑っていた。それが今では、こうして怒ったり、呆れたり、拗ねたり、たまに大声で笑ったりと、表情がころころ変わる。新しい顔を見せる向井はとても新鮮で、カメラを向けずにはいられない。
 ――奇跡のような幸せを、形に残したかった。
 はじめはカメラを向けられて戸惑っていた向井だったが、一年、二年と日を追うごとに抵抗感が薄れてきたようだ。それは思い出を残さないように生きてきた彼が、病を克服した証でもある。
「まあ、これが正人の愛情表現だってわかってるから、悪い気はしないけど……」
 視線を逸らし、微かに頬を朱に染めた向井が色っぽくて、有沢はそうっとカメラを引き寄せる。気付かれぬうちに、とカメラを構えシャッターを押そうとしたが、またも向井に取り上げられてしまう。
「あっ、返してくれよ」
「ダメ」
「そんな意地悪しないでくれ」
 カメラを追って手を伸ばすと、向井が誘うような視線を向けてきた。
「意地悪をしているのは正人の方だろう。せっかく久しぶりに一緒に過ごせるのに、カメラ越しにしか見てくれないの?」
「健吾さん……」
 向井の綺麗な顔が近づき、唇を掠め取られる。
 嬉しい驚きに、今度は有沢から距離をつめ、相変わらず細い身体を腕の中にからめ取った。

※続きは以下反転です。
   ↓
 慎重に彼をソファーに横たえる。
「正人……」
 自らも上に乗り上げ、自分を呼ぶ声に応えるようにキスを落とした。先ほどとは違い、深い結びつきを求める激しい口づけ。
「んっ……」
 角度を変えて繰り返し唇を貪られ苦しくなったのか、向井に軽く身体を押された。
「しつこい」
 口では文句を言いながらも、彼の瞳も情欲に濡れている。
 それを見て、向井の着ている薄手のセーターの下に手を潜り込ませ、素肌の感触を確かめる。有沢よりもやや体温の低い肌は、ひんやりとしていて気持ちいい。
「あっ」
 指先が胸の尖りを掠めると、向井が小さく息をのむ。もっと声が聞きたくて、両方いっぺんに摘んで強弱をつけて刺激した。
「あ、あぁっ」
「気持ちいい?」
 ほんのり赤くなった耳朶に舌を這わせながら呟くと、向井は唇を噛み締めて声を殺そうと努力する。
「声、聞かせて」
 ゆるく左右に頭を振って拒否される。
 向井は誘ってくるくせに、いざ実践となると途端に恥ずかしそうに身を捩る。特に感じている声を聞かれるのが恥ずかしいらしく、いつも声を出すまいと唇を引き結んで抵抗していた。
 その姿がいっそう有沢の欲望を駆り立てていることに、彼は気付いていない。
「じゃあ、声を我慢出来なくなるまで触ってやるよ」
「や……っ」
 おもむろにズボンの上から中心を揉むと、向井が腰を捻って逃れようともがく。それを力ずくで押しとどめ、胸への刺激で反応をはじめていた中心を強く擦り立てた。
「だめ、やめて……」
「どうして? こんなに硬くなってるのに」
「言わないで……っ」
 向井の言葉を無視して服の上から刺激を繰り返す。
「正人、正人っ。お願いだから、もうやめて……っ」
 有沢の手首を掴んでそこから引き剥がそうと必死になっている。
「もう、駄目だからっ」
「駄目って、なにが?」
 わかった上であえて意地悪く尋ねると、向井が涙目で睨んできた。その眼差しが、男をより煽るということがなぜわからないのだろうと不思議になる。
 向井の腰がいっそう震え出した。
「正人っ」
 確かにこれ以上やると服を汚してしまう。有沢はようやく中心から手を離した。
 彼がホッと息をついた瞬間を見計って手早く下着とズボンを剥ぎ取ってしまう。
「やっ……」
 慌てて隠そうと伸ばされた手の動きを片手でいなすと、有沢は天を仰いで蜜を垂らす中心に口づけた。焦らすようにゆっくりと幹に舌を這わせる。
「いやぁっ……、あぁっ」
 細い悲鳴のような嬌声が上がる。
 向井は有沢以外に経験がないようで、人に触られることに慣れていない。それは何度身体を重ねても変わらず、触れるたびに敏感な反応を返してくる。
「正人、駄目だって……っ、離してっ」
 濃い蜜が先端から溢れて、限界を訴えている。
 有沢は幹から伝った蜜で濡れそぼる蕾に、指を忍び込ませた。


        ――――続――――


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2014年10月27日(Mon) | 終わらない夢の中で | TB(-) | CM(0)

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